数回やってみて思ったのですが、ブックパーティは少人数ですとより緊張なく思うところが話せるようです。大人数でのブックパーティはビエンナーレやトリエンナーレのようなお祭り、インデックスのようなものでしょうか。なのでたまには3人などの少人数ベース、いろいろな方の組み合わせでやっていくのも面白いように感じています。
場所は新宿めだかにて。なんとビールとハイボールが120円です!
この格安居酒屋、飲んだくれの画家Tさんに教えていただいたのですが、以来なにかと使いまくってます。この日も3人で、17時から23時まで居たわりにお会計は8千円。すばらしいです。
*
Eさんがローレンス『アメリカ古典文学研究』から、一部朗読してくださったのでご紹介します。この長さなのにめくるめく展開、すばらしい精度の文章です。かっこいい!
“ さて、デイナは故郷に帰った。そして法律家となり、かなり退屈だが、知名度のある市民となった。一度は大使にもなりかけている。そして格別に尊敬もされた。
それ以前の彼は特に尊敬されていた。ともかく彼は「知った」のだ。そしてそれをわれわれに伝えてくれたのだ。これは偉大な業績だ。
それから後はどうなったのだろうか?─いや、べつに。よくいる退屈な凡人であった。これが知識のもたらす最悪の形態である。それだけ生命が失われてしまうのだ。デイナは、二年間、目一杯生きた。そして知った。そして残されたものは彼の中から追放されてしまった。後は、ぱっとしない法律家の歳月だった。
われわれは充分に知っている。知り過ぎている。だから何も知ってはいない。
何かを叩きつぶしてしまおう。われわれ自身を含めて。だが、とくに機械を叩き壊してしまおう。
デイナの小さな本は非常に偉大な本だ。そこには偉大な極限に達した知識、偉大な宇宙の基本要素についての知識がもりこまれている。
結局、知ることが空しいことだとだとるためには、その前にすべてを知らなければならない。
われわれは、想像力を発揮して、すべてを知らなければならない。基本要素の海を含めて。そうして知って知り続けてゆくうちに、突如として知識は収縮し、われわれは永遠に無知であると知るに至る。
そのとき一種の平安が訪れる。そしてわれわれは、自分の無知を知り、新たに出直すことができるのだ。”
以下、各人のおすすめ本の備忘録(わたしまとめ)です。
おふたりとも哲学を読まれており、Sさんは目下小説を書いてらっしゃいます。
哲学勉強会について前向きな話しも出て、今後が楽しみな展開になってきました。
【Eさん】
- 「資本論③」(国民文庫)カール・マルクス (著), 岡崎 次郎 (翻訳)
資本論を読むなら断然、岩波文庫よりも国民文庫がおすすめとのこと。(岩波はあまりに古色蒼然としているとか。。)理論の後に実例が入るなど分かりやすい構成。普遍的で今でも十分通じる内容。 - 「アメリカ古典文学研究」D.H. ローレンス (著)
絶版本。掘り出し物を半値で神保町で買われたそう。個々の作品の言及のみならず、ローレンスのアメリカ論、文明論として読める。そこが素晴らしく面白いとのこと。先でも引用させていただきましたが全編こればりだそうです。おそるべしローレンス。 - 「ニーチェと哲学」ジル ドゥルーズ (著)
(すいません、、まとまったことが思い出せません。。)
【Sさん】
- 「モロイ」サミュエル・ベケット (著)
「モロイ」はとにかく荒唐無稽な面白ギャグ小説である、という話しを以前にSさんから聞いたのでした。ですが、今はそうは思っていないとのこと。第一章ではモロイという変人について微細に描かれる。それはある意味モロイ・システムと呼んで言い。モロイ・システムが外界に対しどう反応し思索するのか、その実験が第一章。第二章で描かれるのはモロイを追うモランという謎の探偵。モランはモロイという生き物のシステムを解明しようとする。そしてモランにはモランのシステムがあるわけです。相反するシステムの人間を対比させる(このへんの記憶がうろんです。。)実験的な小説ではないかと。むむー、そうなのか!と思うと同時にここ一年、小説を書き始めてからSさんはたゆまず成長されているんだなあと感慨深かったです。
【S】
- 「構造・神話・労働」クロード・レヴィ=ストロース (著)
積読を解消しやっと読んだ一冊。レヴィ=ストロースが70年代に来日した際の講演と対談をまとめたもので、口語表現ということもあり、非常にわかりやすいです。民俗学初心者にまずおすすめの一冊かと。哲学のお二人ということで満を持して持って行きましたが、なんとか話しが出来てよかったと思いました。
0 件のコメント :
コメントを投稿